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Vol.108 国勢調査人口と住民基本台帳人口

 

 マーケティングや様々な分析業務を行う中で重要な統計指標として人口データがあります。今回はこの人口データについて国勢調査での人口と住民基本台帳での人口を比較しながらその違いをみていきたいと思います。本来同じ人口なので近い時点のデータはほぼ同様な数値であるはずなのですが、結構差のある場合もあります。

1.全国ベースでの比較

 国勢調査人口と住民基本台帳人口は、国勢調査時点の常住地と住民登録地との食い違いにより差が生じると考えられます。しかし、全国計の人口でみれば地域間のこの違いは相殺されるため、差は小さいのではないかと思われますが、具体的にどの程度の差があるのかを見ていきましょう。

1-1.年齢階級別の差

 表1は全国計の年齢5歳階級別の人口を国勢調査と住民基本台帳で比較したものです。国勢調査は2015年10月1日現在のため、最も時点の近い2016年1月1日の住民基本台帳のデータを年齢別に比較しました。

表1.全国値での比較(年齢階級別)

 人口総数では、国勢調査人口が127,094,745人、住民基本台帳人口が128,066,211人であり、国勢調査人口のほうが971,466人少ない結果となっています。また、年齢別に見ると「0~4歳」「20~29歳」の区分で特に国勢調査人口の少なさが目立っており、逆に「55~64歳」「70~89歳」の区分では国勢調査人口のほうが多くなっています。

 ここで1点注意すべきことがあります。国勢調査人口の「年齢不詳」が1,453,758人存在します。住民基本台帳にも「年齢不詳」はありますが全国で65人とわずかであり、これと比較すると極端に多い数字です。このまま単純比較をするとちょっと問題がありそうなのでここでは国勢調査の「年齢不詳」を按分したデータを使用しています。
 こんなに多くの「年齢不詳」が発生している要因は、プライバシー意識の高まりによる未回答の増加や、生活習慣の変化に伴った調査票回収時の確認のしづらさ、ネットや郵送での回答が可能となったこと等が考えられます。特に表2の通り近年の調査ほどより増加しています。また、単身世帯で年齢不詳の比率が特に高い傾向が見られます。国勢調査の基本統計としての重要性を考えると調査対象者の調査への協力意識を高める必要性を感じます。

表2.国勢調査年齢不詳の時系列変化

 按分の方法は、年齢不詳が単身世帯に偏りがあるため以下の方法で処理されており、この結果は国勢調査の参考表として公表されています。

年齢・国籍不詳の按分済み人口の算出方法

●市区町村
 年齢及び国籍不詳人口を,単身世帯か否か及び男女の別に平成27年国勢調査結果の年齢及び国籍の構成比(不詳を除く。)により比例配分を行う。
 単身世帯及び非単身世帯を合算した結果を市区町村別按分済み人口とする。
●都道府県,全国
 都道府県結果及び全国結果は,市区町村別按分済み人口を合算して算出する。

 

1-2.全国ベースでの差の要因

 これまで見てきたように、国勢調査人口は住民基本台帳人口よりも約97万人少ないことになりますが、この差はどのような要因によるものでしょうか。

●要因1(海外生活者)

 まず思いつくのは、住民基本台帳に登録はしているものの海外で生活している人がいるのではないかということです。留学や海外赴任等の理由によりある程度の期間海外で生活する場合、本来住民票を抜く手続きを行うべきですが、手続きのわずらわしさや、そのまま残すことのメリット、デメリット等もあるようで人によりそのまま残しているケースもあるようです。
 表1で特に国勢調査人口の少なさの目だった年代に20歳代がありましたが、留学等の理由によるものが反映されているのではないかとも考えられます。そのまま残す人の割合は分かりませんが、海外在留邦人数調査(外務省)によると2015年10月1日現在の海外在留邦人数は、1,317,078人でこのうち「長期滞在者」(3か月以上の海外在留者のうち、海外での生活は一時的なもので、いずれわが国に戻るつもりの邦人)は859,994人、「永住者」(当該在留国等より永住権を認められており、生活の本拠をわが国から海外へ移した邦人)は457,084人となっています。「永住者」でそのまま住民票を残している人は少ないと思われるので、実際には「長期滞在者」の何割かの人となるのではないでしょうか? そのように考えると長期滞在者全ての人でも97万人の差は埋められないため、さらに別の要因もあるのではないかと思われます。

●要因2(国勢調査の漏れ)

 国勢調査は、全数調査です。しかし100%完全な全数調査はありえません。国勢調査が全人口のどの程度カバーできているのかと調べてみると「国勢調査事後調査」というものがありました。これは、国勢調査の調査方法及び調査対象の把握状況を検証し、結果利活用上の留意点の把握や今後の国勢調査の企画設計等に資することを目的に行われている調査です。この調査は標本調査ではありますが、国勢調査本体調査での把握状況がわかります。

表3.年齢階級別世帯員の本体調査における把握状況

 この調査によると「本体調査で把握された」世帯員の割合は99.24%、「本体調査で把握されなかった」世帯員の割合は0.76%となっています。「把握されなかった」世帯員を国勢調査の調査漏れと考えると以下の式で漏れてしまった人口を算出できることになります。

国勢調査で把握されなかった人口=127,094,745[国勢調査人口]×(0.76/99.24)=973,317

 この数字はかなり国勢調査人口と住民基本台帳人口の差に近い値です。ただし、よくよく見ていると「複数個所で把握された」世帯員の割合も1.03%あるようです。これは調査の重複を意味しており、調査に漏れた人以上に重複した人がいることになり、ちょっと数字的な説明が難しくなってしまいました。これらの比率はかなり小さな数字であり標本調査の誤差等も考えられますが、全国でみたときの国勢調査人口が住民基本台帳人口を下回っている原因の1つとして調査から漏れてしまったものがある程度存在していることは確認できます。

 年齢別の把握状況では、「0歳」「20~29歳」「85歳以上」で「本体調査で把握されなかった」割合が高い傾向にあります。「0歳」は生まれたばかりの新生児の調査漏れが多く発生している可能性があるようです。表1についても「0~4歳」「20~29歳」の区分では、国勢調査が住民基本台帳に比べて少ない傾向がみられました。

 さらに「複数個所で把握された」世帯員の割合を年齢別にみると「15~19歳」「40~64歳」の区分で高くなっています。重複の発生する原因は、「出稼ぎ・単身赴任者」「別宅・別荘に滞在」「通学」「入院療養」等のようで、実家と常住地の両方でカウントされているようなケースです。表1での国勢調査人口の方が多い年齢区分の要因がこの重複にあるのではないかと考えましたが、「55~64歳」については一致していますが他の区分で食い違っています。国勢調査での、年齢不詳の按分処理の影響等もあるかもしれません。

 

2.地域間での差

 つぎに、地域間での差をみていきたいと思います。住民登録地と国勢調査時点の常住地との食い違いによりこの地域間での人口の差が発生するわけですが、この住民登録地と常住地についても国勢調査事後調査で調査されています。

2-1.国勢調査事後調査から分かること

 表4は世帯の種類別にその状況を見たものです。常住地と異なる住民登録地の割合は2.97%いるようです。特に「施設等の世帯」では63.35%と6割強の人が自宅に住民票を残したまま施設に入居していると考えられます。施設の中でも「病院・療養所の入院者」は86.34%と特に高い割合を示しています。

表4.世帯の種類別本体調査時点の住民登録地の割合

 表5は年齢階級別にみたものですが、「20~29歳」の若年層と「85歳以上」の高齢層で住民登録地とは異なる常住地で調査されている人の割合が高くなっています。就学や就職のため若年層で実家を離れて暮らしているもの、高齢者で病院や施設に入所しているもの等で住民票を移していない場合が推察されます。

表5.年齢階級別本体調査時点の住民登録地の割合

 

2-2.国勢調査人口の多い市区町村

 表6は市区町村別に国勢調査人口の住民基本台帳人口に対する比率の高い順に並べたものです。前述のとおり、地域間での差は、高齢者の施設への入居や学生の実家を離れての生活等が主な要因と考えられるため、参考値として「介護サービス定員比率」と「大学・大学院在学者比率」を一緒に掲載してみました。
 「介護サービス定員比率」は、高齢者施設の利用者数が分からないため、「介護サービス施設・事業所調査」より市区町村別に「介護老人福祉施設定員」「介護老人保健施設定員」「介護療養型医療施設病床数」の合計値を代用して、80歳以上の住民基本台帳人口に対する比率を算出しました。また「大学・大学院在学者比率」は人口総数に占める大学・大学院在学者数の比率ですが、2015年国勢調査では調査されていないため、2010年国勢調査データを使用しています。

表6.市区町村別比較(国勢調査人口比率の高い順)

 高齢者介護施設の充実している自治体へは、周辺自治体からの高齢者も入居することが考えられ「月形町」「与那国町」「壮瞥町」「神恵内村」「川場村」等でその影響があると思われます。また、学生の住民票を移さないことによる影響の高いものとして京都市の「上京区」「左京区」「北区」及び「野々市市」がみられます。
 ただし、高齢者と学生による影響のみでは、国勢調査人口が、住民基本台帳人口を上回ることを全て説明するのは難しいようです。その他の要因によるものもありそうです。

 これら以外の要因として具体的になぜ国勢調査人口が住民基本台帳人口に比較して多いのかをネット等からの情報をもとに推測してみました。

月形町 「介護サービス定員比率」も比較的高い数値となっていますが、ここには「月形刑務所」という矯正施設があります。全国的にも規模の大きい施設のようで、この受刑者の人口が影響していると考えられます。
与那国町 こちらも「介護サービス定員比率」が比較的高い数値となっていますが、他の要因として、自衛隊の誘致に伴い施設工事等の関係者が国勢調査の時期にかなりの数滞在していたと思われます。日経新聞記事によると2015年度ピーク時には600人程度の工事関係者が滞在していたようです。
小笠原村 若い人たちが長期間(数年間)リゾートバイトのような形で来島することもあり、また国、東京都などの出先機関があることから2~3年単位での赴任者も多いことが影響しているのではないかと考えられます。
川上村 長野県の川上村は、レタスの一大産地であり、外国人技能実習制度により大量の外国人が働いています。川上村に住民登録していない外国人も多数いるのではないかと考えられます。
浪速区 大阪市「浪速区」は、比較的若い世代の単身世帯の多い地域であり、地方の若者が住民票を移さずに都会にでてきているようなケースがが多いのではないかと考えられます。
相馬市 東日本大震災の影響により、相馬市内にも被災者向けの仮設住宅が多数あります。この仮設住宅に相馬市以外の被災者も含まれているのではないかと考えられます。
南牧村 長野県南牧村は川上村同様に高原野菜の産地であり、外国人技能実習制度により大量の外国人が働いています。川上村と同様の影響と考えられます。

 

2-3.住民基本台帳人口の多い町村

 表7は国勢調査人口よりも住民基本台帳人口のほうが多い市区町村を国勢調査人口比率の低い順に並べたものです。この中で上位にある福島県の各町村は、いずれも東日本大震災による原発事故で避難地域に指定された地域です。そのためかなりの人たちが住民票は残したまま、自町村外で生活していたものと思われます。「富岡町」「大熊町」「双葉町」「浪江町」については、国勢調査人口は0となっています。また「南三陸町」も東日本大震災で津波による大きな被害を受けており、いまだに復旧工事が行われていることから、まだ町外での生活者が残っていると考えられます。

 他の町村については、具体的な理由は分かりませんが、大学等もなく、若い世代を中心に就学、就労のために住民票を移すことなく他の市町村で生活している人の比率が高いのではないかと考えられます。

表7.市区町村別比較(国勢調査人口比率の低い順)

 

3.まとめ

 全国ベースでみると、国勢調査人口は住民基本台帳人口よりも約97万人(住民基本台帳の0.8%)少ない結果となっています。その要因は住民票を残したまま海外で生活している人、国勢調査で調査から漏れてしまった人等によるものではないかと考えられます。

 また、市区町村別にみた場合国勢調査人口のほうが多いのは、一般的には大きな大学等がある市区町村へ学生が親元に住民票をのこしたまま生活している場合や、大規模な病院や介護施設のある地域に、高齢者が住民票を移さずに入院入居していることが要因と考えられます。逆にこれらの施設がない地域では住民基本台帳人口が多くなるのではないでしょうか。ただし、これ以外の要因も色々とありそうです。以下にその他主なものをまとめてみました。

●矯正施設等の特殊な施設がある場合に国勢調査人口が多くなります。

●大規模な建設・工事等により一時的に出稼ぎ労働者等がいる場合国勢調査人口が多くなります。

●外国人技能実習制度等による外国人労働者が多く、就労地に住民票を移していないものが多い場合国勢調査人口が多くなります。

●特に今回目立ったものとして、東日本大震災における影響です。災害により居住できなくなった人のいる場合には住民基本台帳人口が多くなります。

 国勢調査は5年に1度の調査です。内容的には世帯構成(世帯主との続き柄)や、就業の状況、産業、職業、通勤通学地などの事項についても調査が行われており、多くの集計データが公表されています。これに比べて住民基本台帳人口は、性、年齢別人口、世帯数等のみですが、最新時点のデータを入手できます。
 マーケティング等では状況に応じてそれぞれのデータを使用することとなりますが、これまで述べてきた違いや特性を理解したうえで利用すると、より有効に活用することができるのではないでしょうか? 特に小地域別(町丁単位等)に分析等を行う場合には大きな違いが現れる場合もあると思われます。

 

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