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Vol.109 憂鬱じゃなければ仕事じゃない?

 

 もう6月。社会人にとっては第1四半期の締めの月になる。期初からの2ヶ月はあっという間だ。
 「盆が来たかと思ったら、もう正月」。若い頃は「そんな!」と思っていたが今では共感できる。
 そして私は6月があまり好きではない。理由は梅雨時期でジメジメして、気候的に曇りが多く暗いこと、そして祝日がないこと。
 祝日と言えば、今年のゴールデンウィークは最長で9連休が可能だった。
 私は休日出勤が1日あったものの、年休を2日消化して8連休にした。特に遠出することもなく、そう遠くない定年後の生活をイメージして過ごしてみた。その結果、なかなかよい休みになったと思う。
 休み明け、いつもどおりに仕事に行くのだが、定年後を意識した良い休みを経験したせいか、出社することに若干の抵抗を感じた。ふと「これが五月病なのか」と考えてみた。いや、もとよりストレスフリーな性格で、職場環境の大きな変化もなく、これまでに一度も「五月病」に該当する症状になったこともない。たぶん、一時の気の迷いだったのだろう。
 しかし、連休明けは「五月病」という病に苦しむ老若男女が増える時期である。

 

■ 五月病って?

 「五月病」とは何か。ウィキペディアでは「新人社員や大学の新入生や社会人などに見られる、新しい環境に適応できないことに起因する精神的な症状の総称」としているが、「新しい環境」に遭遇するのは何も新入社員や新入生だけではない。ベテラン社会人でも部署異動、昇進・昇格などで新しい職場環境を迎える方は多い。
 主な症状として「抑うつ、無気力、不安感、焦りなどが特徴的な症状である。主訴には、不眠、疲労感、食欲不振、やる気が出ない、人との関わりが億劫、などが多い」(ウィキペディア)。つまり「ストレス」が原因であり、解消するためには気分転換をすることがよいと言われるが、一説には5月中に解消できないと重症化する可能性もあるという。
 似たような症状で、以前のレポートでも取り上げられた「サザエさん症候群」や「燃え尽き症候群」「リアリティショック」などもあるようだ。
 このストレス、どのような人がストレスを抱えやすく、どのようなことがストレスを引き起こしているのか、主に職場環境について調べてみた。

■ 働く人のストレスって?

 我が社では、数名の研究員が各自テーマを決めて行う「自主研究調査」という業務があり、その一環で2015年9月に日本全国約3万人に対するインターネットリサーチを行った。
 このインターネットリサーチ(以下、リサーチ)、日本全国約3万人から回答をいただいたわけだが、地域によって回答率に差があるため、日本を9つの地域ブロックに分割し、それぞれのブロックの人口構成比に合うように回答者数を調整し、1.7万人を分析対象者数とした。さらに、職場環境について調べるため、有職者(パート・アルバイトを除く)7,521人を対象として分析した。

図:個人属性別にみた仕事でストレスを感じている割合

 上のグラフは、「仕事でストレスを感じているか」に対する質問で、「当てはまる(「当てはまる」と「やや当てはまる」と回答した割合の合計)」と「当てはまらない(「あまり当てはまらない」と「当てはまらない」と回答した割合の合計)」を、性別、年代、職業といった個人属性別に示したものである。
 これを見ると、「男性」よりも「女性」の方がストレスを感じている割合が有意に高い。「有意に高い」とは、『「男性」と「女性」で、仕事でストレスを感じている割合には差がない』という仮説(帰無仮説)が成立するか、棄却されるかを検証した結果、棄却された、つまり「差がないとは言えない」=「差がある」という結果が得られたということを意味する。また、その水準(精度)は同じ調査を100回行っても95回は同じ結果が得られる精度である。
 同様の視点で年代別にみると、45~49歳の層を境に以降の年代では「当てはまる」と回答した割合は減少している。つまり、50歳以上の人は49歳以下の人に比べて仕事でのストレスを感じている人が少なく、しかも年齢の上昇に伴いこの傾向が強くなる。
 職業別ではさらに興味深い結果が得られた。それは「正社員、正規職員」や「派遣社員」という「一般社員」よりも「会社経営・役員」の方がストレスを感じている割合が低いという結果である。どちらかといえば、経営層の方が経営に関する様々なストレスを抱えているというイメージが強いのだが、この調査では逆だった。気になるのは両者間の差の大きさだ。労働者のストレス解消、心のケアは企業にとって非常に重要であることを改めて認識させられる結果だ。

図:勤務先属性別にみた仕事でストレスを感じている割合

 次に回答者の勤務先の属性でみたグラフが上の図である。まず、勤務先の業種別にみると、「当てはまる」割合が全体平均に比べて高いのは「医療、福祉」(75.1%)と「金融・保険業」(69.9%)、「製造業」(69.1%)である。人の命を預かる仕事、高齢者などを介護する仕事、緻密な組み立て加工やライン製造など、1つのミスが大事故につながること考えるとうなずける結果だ。「金融・保険業」についても、内部・外部との人間関係や業務規模の大きさ、他人の資産を管理する仕事などがストレスにつながっているものと思われる。
 勤続年数別にみると、「勤続20年以上」の層よりも20年未満の各層で「当てはまる」割合が高い。ここでいう勤続年数は現在の職場での年数のため、現在の職務経験が浅い人でストレスを抱えている傾向が強くなるが、勤続年数を重ね、仕事に慣れていくことでストレスへの耐性が形成されていると考えられる。
 また、勤務先事業所の従業員規模別でみると、従業員が6人以上の職場に勤務する人は、「1~5人」規模の事業所に勤務する人に比べて「当てはまる」割合が高く、また、10人以下の規模の事業所に勤務する人よりも11人以上の規模の事業所に勤務する人の方が高いという結果である。つまり、利害関係者が多いとストレスも多くなるということだ。しかも、従業員数が多いということは、多くの部門に分割され、これによってセクショナリズムに陥りやすく、部門間のコンフリクトによりストレスが発生する可能性も高い。
 逆に利害関係者が少ない職場の場合、好むと好まざるとに係らず、従業員同士のコミュニケーションの必然性は高くなる。円滑なコミュニケーションが促進されることがストレス解消に寄与しているのかもしれない。

 

■ ストレスを感じやすくなる職場環境って?

表:ストレスを感じやすくなる職場環境の要因分析結果

 リサーチでは、上の表に掲げる18項目の職場環境それぞれについて、「当てはまる」「やや当てはまる」「あまり当てはまらない」「当てはまらない」のいずれに該当するかを質問しており、この18項目の回答結果と「仕事でストレスを感じる」かどうかへの回答結果の間にどのような因果関係があるのか、回帰分析を行った。回帰分析とは簡単にいうと、ある事象とある事象との間に因果関係があるのか、ある場合にはどのような構造になっているのかを分析する手法である。例えば、1週間の平均気温(x)とある店舗の売上高(y)に因果関係はあるのか、それはどのような関係なのかを数式(回帰式:y=ax+bなど)で表すものだ。

 回帰分析についてくどくど説明するとかえって分かりにくくなるので、結果がどのようになったかでみてみよう。その前に結果をみるうえで大事なポイントだけを先に説明する。
 まず、分析(回帰式)の精度だが、あまり高くはない。Cox-SnellやNagelkerkeが0.2程度ということは、職場環境とストレスの因果関係を、この回帰式では20%程度しか説明できないということだ。ただし、ここに挙げた項目全てでストレスの要因を規定するわけではなく、職場環境の主なストレスの要因を探ることが目的のため、このまま説明を続けていくことにする。
 表中の「ミスが無いように気を使うことが多い」~「仕事は社会に役立っていると感じる」それぞれに「偏回帰係数」と「有意水準」を付している。「偏回帰係数」は、18個それぞれの項目(回帰分析では変数という)にかかる重みで、中学校で学んだ「y=ax+b」という一次式の「a」の部分、つまり「傾き」に該当する。「有意水準」は、それぞれの変数の精度を表す。*1つの場合は100回の分析を繰り返しても95回は同じ変数が採用される、*2つの場合は100回のうち99回は同じ変数が採用されることを意味する。

 さて、結果の説明に入ろう。ストレスを感じやすくなる職場環境としても最も大きな要因は「ミスが無いように気を使うことが多い」ことで、このような傾向が強い職場だとストレスを感じやすくなる。次に「現在の仕事をずっと続けていきたいと思う」だが、「偏回帰係数」(傾き)の値は「マイナス」である。これは、「現在の仕事をずっと続けたくない(続けたいと思えない)」職場環境の場合、ストレスを感じやすくなるということだ。同様にみていくと、「仕事に充実感や達成感が感じられない」「同僚と和気あいあい、協力的に仕事ができない」「顧客との関係で気を使うことが多い」「外部の関係者との関係が悪く、協力的に仕事ができていない」「仕事の目標や計画を自分で決められない」「自分の職業は引越を伴う転勤の可能性が高い方である」などが、ストレスを感じやすい職場環境となった。

表:ストレスを感じやすくなる職場環境満足度の要因分析結果

 では、職場環境のどのような満足度が低下(上昇)するとストレスを感じやすくなるのだろうか。これについても同じように回帰分析を行った。
 その結果、「仕事内容」に対する満足度が低いとストレスを感じやすくなり、次に「人事評価・処遇のあり方」に対する満足度の低下、「労働時間・休日等の労働条件」に対する満足度の低下、「同僚や上司との人間関係・コミュニケーション」に対する満足度の低下、「賃金」に対する満足度の低下などでストレスを感じやすくなるという結果となった。

 なお、この16の変数には、モチベーション理論研究の代表的研究者である、元ユタ大学特別教授フレデリック・ハーズバーグ氏が提唱する「二要因理論」(動機付け・衛生理論)の各要素が含まれており、青色の変数が「動機付け要因」、黄色の変数が「衛生要因」である。「衛生要因」とは、この要因が満たされたからといって職場全体の満足度やモチベーションは高まらない要因、「動機付け要因」とは、仕事満足度及びモチベーションを高める要因である。このため、企業が業績等を改善していくには、まず「衛生要因」の満足度を高めたうえで、「動機づけ要因」の満足度も高めていくことが重要と言われている。
 この観点から分析結果をみると、「動機づけ要因」である「仕事の内容」に対する満足度が低いと最もストレスを感じやすくなり、その次に「労働条件」や「同僚・上司とのコミュニケーション」、「賃金」などの「衛生要因」に対する不満度が低いとストレスにつながるという結果となっている。つまり、労働条件やコミュニケーション、賃金の満足度を高めることもストレス対策としては重要ではあるが、仕事の内容に対する満足度を優先して高めることで、さらにストレスが抑えられる可能性があり、ストレス対策だけではなく「働く」というモチベーション向上にも寄与する可能性があるということになる。

 

■ おさらいしてみよう!

 リサーチの結果をおさらいしてみよう。
 「仕事でストレスを感じている」傾向が強いのは、

男性よりも女性
50歳以上よりも50歳未満
経営層よりも一般社員、派遣社員
勤続年数や現在の職場経験が長い人よりも短い人
勤務先事業所の従業員規模が小さい人よりも大きい人

という属性だった。

 そしてどのような職場環境がストレスを促すのかは、

「ミスが無いように気を使うことが多い」
「現在の仕事をずっと続けたくない(続けたいと思えない)」
「仕事に充実感や達成感が感じられない」
「同僚と和気あいあい、協力的に仕事ができない」
「顧客との関係で気を使うことが多い」
「外部の関係者との関係が悪く、協力的に仕事ができていない」
「仕事の目標や計画を自分で決められない」
「引越を伴う転勤の可能性が高い」

という職場環境だった。

 また、職場環境の満足度とストレスの因果関係では、

「仕事内容」に対する満足度が低いこと
「人事評価・処遇」に対する満足度が低いこと
「労働時間・休日等の労働条件」に対する満足度が低いこと
「同僚や上司との人間関係・コミュニケーション」に対する満足度が低いこと
「賃金」に対する満足度が低いこと

がストレスを促すが、「衛生要因」である「労働条件」や「人間関係、「賃金」に対する満足度を高めつつ、「動機づけ要因」である「仕事内容」に対する満足度を高めることが、ストレス対策に加え仕事に対するモチベーションを向上させる可能性がある。

 上記の結果は、ストレスを感じやすい人たちを含め、働く人たちの職場環境や職場満足度を改善していくことが、1つのストレス対策になるということを示唆している。

 

■ 気持ちを奮い立たせてくれるSpecial Phrase

 2018年5月7日(月)に放送された「月曜から夜ふかし」という深夜番組で心理テストをやっていた。
 内容は、パッと思いつく四文字熟語を2つ挙げるもので、私の1つ目は「臥薪嘗胆」、2つ目は「弱肉強食」だった。1つ目の熟語が意味するのは「自分の人生観」、2つ目は「恋愛観」だそうだ。
 「臥薪嘗胆」の意味は、「目的を遂げるために苦心し、努力を重ねること」(コトバンク)であり、これが私の人生観になる。私のFirst nameにも「努力しなければ、ただの人」という意味が込められており、振り返ってみてもこのような言動が多かったように思う。これが私のモチベーションだったのかもしれない。

 他にもこのレポートタイトルの参考となった、株式会社幻冬舎代表取締役社長である見城徹氏のPhraseで、著書名にもなっている「憂鬱でなければ、仕事じゃない」も大好きだ。彼はこのPhraseに対して、「憂鬱を好む人間などいない。しかし一方で、憂鬱は大きな反発力を生む。それに気付いた時、憂鬱は間違いなく仕事の糧となる。」と説明している。初めてこのPhraseを目にしたとき、はたと膝を打った。
 「そうか、仕事は楽しくするものだと考えずに、初めから仕事を憂鬱だと思っていれば、それ以下になることはない。また、憂鬱が働く原動力になってくれるんだ」
 それからはそう思うことにしている。

 彼のPhraseで、あと2つ好きなものがある。
 1つは著書「たった一人の熱狂」の中で記した「No pain, No gain. 痛みのないところに前進はない」。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と似ているが、彼のPhraseの方がグッとくる。
 もう1つは著書名にもなった「絶望しきって死ぬために、今を熱狂して生きろ」である。彼はこのPhraseに対して、「絶望とは、あやふやな望みや自分への甘えが断たれた状態である。つまり、絶望しきることとは、曖昧なものを一切排除した、晴れやかで揺るぎない境地に達することなのだ」と説明している。壮大な達成感を味わうために熱狂し、人生に悔いを残さない生き方。気持ちを奮い立たせてくれるとても魅力的なPhraseだ。

 また、先日亡くなられた、鉄人・衣笠祥雄氏はこんな言葉を残してくれた。

 「自分でできることを、自分なりに一生懸命やってきた。ただそれだけですよ。」
 「野球が大好きでした。こんな好きなことを一日たりとも休めますか。」
 「誰にも好きなことはあるだろう。やっていて飽きないことがあるだろう。だからお父さんは言うんだよ。何でも好きなことをしなさいって。好きなことには、きみたちの素質があるからなんだ。」

 連続出場記録の背景にあった思い、それは「仕事」に対するモチベーションではなく、「好きな野球」に対するモチベーションだった。

 そういう意味では、私は「仕事」が好きではない。どちらかといえば嫌いである。今年のゴールデンウィークでこの思いはさらに強まった。
しかし、今の自分の「仕事内容」は嫌いではない。むしろ好きだ。入社当時は明確に好きではなかったかもしれないが、「嫌いではなく少し好き」だったから今まで続けてこられたのだと思う。

 

■ Let’s Fever!

 見城氏も衣笠氏も「熱狂」という言葉がとてもよく似合う。
 「熱狂」すれば我を忘れる。
 ストレスを感じている暇はない。
 「熱狂」は未来に向かって突き進む原動力。

 だから、私は次のことを提案したい。

1.これから就職する人は、自分が好きな仕事(職業)に就いてほしい(妥協をしない)。

2.好きな仕事が分からない場合、自分の過去を振り返って好きなことを思い出してほしい(常に振り返ることが大切)。

3.今の仕事が好きであれば、迷わず熱狂してほしい(熱狂しすぎてBurn outしないように)。

4.今の仕事内容が嫌いなら、今すぐその仕事を辞めて、好きな仕事を探してほしい(簡単ではないだろうが、あなたの人生はあなただけのもの。しかも一度きり。迷っている時間はない)。

5.今の仕事が好きでも嫌いでもない人は、少しだけ好きになる努力をしてみてほしい(気付いたときには熱狂しているかも)。

 それでも落ち込んだときは、「なぜ私はこんな辛い(嫌な)仕事をしているのだろうか」とは考えず、「どうしたらこの辛い(嫌な)仕事を終わらせられるだろう(あるいは、やめられるだろう)」と考えてほしい。人間は「理由」を考えると行動力が鈍るが、「目的」を考えると具体的な行動をとりやすくなるらしい。
 また、人間は、なぜそうなかったという「理由」を考える「原因追求型」(過去志向)と、これからどうすればよいかという「目的」を考える「問題解決型」(未来志向)に分かれ、「問題解決型」は長生きし、「原因追求型」は早死にする傾向があるらしい。

 さあ、未来志向で、憂鬱という反発力を糧に、熱狂への第1歩を踏み出そう!

 

(参考文献)

「憂鬱でなければ、仕事じゃない」 見城徹+藤田晋 著(講談社+α文庫)
「絶望しきって死ぬために、今を熱狂して生きろ」 見城徹+藤田晋 著(講談社+α文庫)
「たった一人の熱狂」 見城徹 著(幻冬舎文庫)
「図解 モチベーション大百科」 池田貴将 著(サンクチュアリ出版)
コトバンク
ウィキペディア

 

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